ずりーせんSHOW

金玉が奏でるグルービーなベースライン

僕の前に現れるタイラー・ダーデンは真面目で辛辣

僕(昼飯はコンビニで適当にパンでも買うか……)

 

○○(え~ 昨日もパンだったじゃん)

 

僕(うん…… さすがに飽きるか)

 

○○(そういえば駅前にいい感じのカレー屋あったよ)

 

僕(あーいいね そこにしよう)

 

彼はいつも、僕が考え事をしている時にちょっとしたアドバイスをくれる。
今日もこんなやりとりがあり、昼飯はカレーに決まったのだった。

 

 

 

ちなみに、これらのやりとりはすべて僕の脳内で行われたものである。

 

 

そう、彼の名前はタイラー・ダーデン
いつからか僕の前に現れ、悩める僕に助言をくれる爽快な男である。

 

もし例の映画の通りこのまま話が進んでいけば、僕はファイトクラブを立ち上げ、それがいつしかテロ組織に発展し、無数のビルに爆弾を仕掛けることになるのだろう。

 

ところが、僕の中のタイラーはかなり一般的な価値観の男である。

久しぶりに外へ出かける時、ひげ剃るのめんどくせえなぁなんて考えてたら
(伸びっぱなしで外に出るなんてかっこわるいぞ、人に見られても恥ずかしくないようにしないとダメだぞ)
なんてことを僕に言ってくる。

 

それに加え、僕よりも優しく誠実な男である。

学生時代、レジ打ちのアルバイトで高圧的なおじさんの対応をしたときも

 

僕(なんだあのおっさん感じ悪いな、バイトに一方的に講釈たれやがって)

 

タイラー(まぁまぁ、いいじゃん)

 

僕(よくねぇよ、おっさんのオナニーに付き合わされて気分悪いわ)

 

タイラー(おじさんだって仕事や家庭のことで大変なんだよ)

 

タイラー(もう21時だってのにスーツ姿だもん、きっと残業でイライラしてたんじゃないかな)

 

タイラー(ちょっとぐらいさ、我慢してあげようぜ)

 

と、このように僕の怒りを静めてくれるのだ。

 

 

優しく誠実で社会性がある僕の中のタイラー・ダーデン
映画とは真逆の性格だが、彼も僕のコンプレックスから生み出されたもう一つの人格なのだろう。

 

半年前に仕事を辞めてからタイラーが現れる頻度が増えたように感じる。

ぼーっとしてるだけの日々。減ってゆく貯金。
(そろそろバイトでもしないとマズいよなぁ…… でもなぁ…… めんどくせぇなぁ…… ロックじゃねぇ…… うん…… バイトなんてロックじゃねぇよ……)
なんて思いつつ、今日も外をほっつき歩いてると

 

タイラー(お前さぁ… そんなことでどうすんだよ)

 

僕(うわ、今日もでたよ)

 

タイラー(毎日家でぼーっとして、暇なんだからバイトぐらいすればいいじゃん)

 

僕(……)

 

タイラー(それにめんどくせぇとかロックじゃねぇとか言ってるけど、そういう事を言っていいのは夢や目標がかなう日まで生活していくためにバイトをしている人たちなわけで)

 

僕(……)

 

タイラー(働きたくないって理由でそんなことをいうのはただ自分が空っぽな人間だってことだろ)

 

 

厳しっ。よくそんなきついことが言えるな、お前は僕だろう。

 

まぁでも彼の言うことはいつだって正しい。彼の意見に従い、すべてを委ねてしまったほうが真っ当な人間でいられるのは確かなのだ。

 

 

僕は外でタイラーと殴り合った。「うるせ~っ!!!」と叫びながら。

 

ぼくはジャックの堕落した精神です